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スペースマリーンのパウロ=サンドロス中隊長は、第3中隊が態勢を立て直すのを見計らって先遣隊をとある廃棄された古い聖堂要塞の調査に向かわせた。
この要塞はかつてライチャスエンジェルズと呼ばれた小さなスペースマリーン戦団が所有していた3つの要塞の内の1つだった。
かれこれ300年以上も前の話になるが、ライチャスエンジェル達はより大きな、かのブラックテンプラーズ戦団の遠征軍に吸収・編入されてジェニスを離れる事となったため、これらの聖堂要塞を廃棄処分にしたとされている。
サンドロス中隊長は、テラのアデプタス=メカニカスのメイガス達ならばここに残された古い設備からライフジェネレーターやビアドについての『何らかの手掛かり』をつかめるやも知れないと考えた。加えて行方不明のアデプト=ビアド=ドゥアがこの要塞内の設備を使用したり作業をしていた痕跡があるかも知れない、はたまたここに潜伏しているかも知れない・・・そう期待を抱いていた。
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パウロは衛星軌道上で微動だにせぬ中隊の移動司令部、ストライククルーザーから上陸部隊を降下させ、聖堂の調査に向かわせた。
しかしながらインペリアルフィストのプレデター、ライノ、ランドスピーダーが巨大な要塞に接近するや、彼ら由緒正しいマリーン達は突然の襲撃を受けた、それは強大なデーモンの軍勢であった。
随所で明滅する数多の光が溢れかえり、それと共に無数のワープゲートが開いた。ティーンチ神の下僕である異形のホラーとフレイマーがその身にある無数の口々から耳障りな呪詛を吐き出しつつゲートから次々になだれ込んできた。そして間断置かず立て続けに今度はコーン神の下僕、牙を剥いた獣面のブラッドレター達が唸りをあげながら『歪み』から現世へと殺到してきたのだった。
この事態を受けてパウロは速やかかつ的確な対処を行った。彼は上陸部隊の遙か頭上、成層圏を突き抜けた先を航行中のインペリアルフィスト・ストライククルーザーからこれらのデーモンを排除するための増援を送り込んだ。程なくして黄色い条光が激闘で敵味方入り交じる戦場に複数降り注いだ。地表に降り立ったドロップポッドの分厚い合金製のハッチを弾き飛ばし、中からより強固な鉄の塊ドレッドノート達がその姿を現した。この増援の鉄巨人はデーモンの軍勢をラスキャノンやミサイルランチャー、ストームボルターで容易く粉砕した。
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しかし、この戦闘は偶発的に発生したものではなかった。これは強力なデーモン、キーパーオブシークレット「テンプテイトリックス」と彼の新しい副官であるティーンチ・デーモンプリンスに率いられた本格的な現世への侵攻であった(かつてのテンプテイトリックスの副官はアルファリージョンとの激闘でジューダスに消滅させられている)
その長身のティーンチの化身は、ドレッドノート軍団に襲いかかった。眼前の邪魔なブラザー・インディクスを蒼い光を放つエネルギーボルトをもって蹴散らすと、次に彼の指先はアイアンクラッド・ドレッドノートに向けられた。デーモンプリンスの邪悪な呪詛はおぞましい叫び声と共に蒼い稲妻となってドレッドノートに放たれた。巨大な殺戮マシーンの分厚い装甲も歪みのエネルギーには耐えられず、ずたずたに引き裂かれてしまった。
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守護神を失ったインペリアルフィストは持ちうる限りの対戦車兵器、ラスキャノンとクラックミサイルで忌まわしきデーモンの排除を試みたが、デーモンプリンスは魔術を用いてティーンチ神の歪みの力から錬成した強固な防壁を作りだした。対戦車弾頭はこの魔術の楯にあえなく跳ね返されてしまった。
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ストライククルーザーから戦況を見守っていたサンドロス中隊長は、デーモン達の側面を襲うべく戦場の東にいたスカウト分隊が、逆にデーモンの反撃にあって全滅の憂き目に直面するのを見咎めた。サンドロスは自ら、彼らスカウトを救出すべく屈強なバトルブラザー10名と共にドロップポッドに乗り込んで地表に降下した。
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しかしサンドロスの素早い判断もむなしく、その到着はデーモン達に遅れをとった。デーモンの司令官とも言えるテンプテイトリックス自身と、疫病の詰まった疱瘡で全身が膨れ上がったおぞましきプレイグベアラー達の大群が彼らの到着ポイントで待ちかまえていた。それでも勇敢なるスペースマリーン達は何の躊躇もなく巨大な体躯を持つグレーターデーモンとナーグルの下僕達に戦いを挑んだ。何とか汚らわしいナーグルデーモン達をチェーンソードで叩き伏せたものの、スラーネッシュ神の化身は、何の造作もなく容易くインペリアルフィストの精鋭達をパワーアーマーごと切り刻んだ。
『サンドロスの辞書に後退の二文字は無い』と評される通り、中隊長は後退の選択肢を捨てて果敢にもおぞましきテンプテイトリックスに一騎打ちを挑んだのだった。スペースマリーンの勇士はパワーフィストの強烈な打撃をもってこのデーモンを歪みの渦へ叩き返してやろうと襲いかかり、これをよろめかせたが、ついぞテンプテイトリックスを打ち滅ぼすには至らなかった。キーパーオブシークレットはサンドロスの身長よりも長い巨大な魔剣でサンドロスの腹を裂いた。サンドロスは胴から文字通り真っ二つに斬り伏せられてしまったのだった・・・!
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サンドロスの英雄的行為でデーモンの魔手から救出されたスカウト分隊の生存者2名が、デーモン達の猛攻が過ぎ去った後で中隊長の肉体を回収し、ストライククルーザーへと持ち帰った。
艦内では直ちに第3中隊のキャプテン=サンドロスの蘇生手術が始まった。
彼はバイオニック手術を受け身体の一部を機械化した。大手術ではあったが、生への渇望と任務への強い決意が中隊長の魂を現世に押し留めたのだった。
アポシカリーのラボで回復カプセルに入っている間に、今回の戦闘で大勢の同胞達がこの世を去った事を知らされたサンドロスは愕然として肩を落とした。悪いニュースは更に続いた・・・今回調査した聖堂要塞ではアデプト=ビアド=ドゥアに関する手掛かりが何ら得られなかったという報告が入ると、同胞の死を悼むサンドロスの落胆はより深くなっていった。
彼は盟友であるインペリアルガードの働きに一縷の望みを託した・・・クラウザーのハルコニアン第151連隊と、そして新たにジェニスに到着したモルディアン第82連隊・・・未だ深手が癒えぬサンドロスには、彼らのミッションが滞りなく遂行される事を祈る事しか出来なかった。 |