タウストーリーの翻訳 by 卵帝
ここのところ、タウ的なLDを上げる作戦の一環として、新幹線の行き帰りなどに、最初に出たタウの3版コデックスに収録されてるショートストーリーを訳してました。 見開き1ページの短い話なんですが、最初にタウって種族が出た時、奴等の雰囲気を掴む上で非常に重要な資料だったと思います。 現在の4版コデックスって、こういうコデックスに沢山載ってて読むのが楽しみなショートストーリーは殆ど載ってないんですよね。6版コデックスが出たら、コレも再収録して、新しいエピソードも入れて欲しいものです。 状況設定としては、安定した情勢が続いている中、タウ側が急に領土拡張を再開し、インペリウムの二ムボザという惑星に侵攻してきます。 しかし、インペリウムは現在ティラニッドへの対応に追われていて、増援を派遣するのは暫く時間がかかります。そこで、増援到着までタウの攻撃開始を遅らせるために、遅延交渉をせよとの命を受けて、インペリウムの外交官がタウのトゥルク家門を訪れるという話です。 ストーリーの合間に差し込んでいる画像は主にタウの戦力紹介となっており、ストーリーと直接の関係はありませんのであしからず。 |
免責事項 以下に掲載する翻訳は完全に非公式であり、ゲームズワークショップ社によって承認されたものではありません。 |
アデプト・ラファエル・パルマタスは、シャトルのランプから降り立ち、強い西日に目を細めた。大気は暑く、澱んでおり、無風状態である。彼は眉に汗が流れてきたのを感じた。 不意に、巨大な人影が彼を覆う。着陸プラットフォームの上にいた、インペリアルフィスト戦団のタエロス中隊長が合流したのだ。このスペースマリーンは、重々しいパワーアーマーとその上に着けた儀礼的な毛皮のマントにも関わらず、暑さを歯牙にもかけていないように見えた。 彼等のシャトルは、とてつもなく高い構造物の頂上に着陸しており、パルマタスは周囲全方位、幾マイルにも渡って、タウの都市を見渡すことができた。帝国の殆どの都市とは違って、この都市は美しく、開放的である。天高く突き抜ける白銀やガラスの荘厳な尖塔群が立ち並び、その間を空中回廊が繋いでいる様は、まるで重力の法則が存在していないかのように思えた。彼は、反重力列車の列が、都市の中を音も無く移動しているのを見た。その動きは上品なバレエめいており、列車は再び都市の間へと消えて行った。 |
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突如、プラットフォームを横切る壁の一部が開き、ローブを纏った人影が、太陽光の元へ歩み出て来た。パルマタスは人影を注視したが、その人物はタウではなく人間だった。男は屈強な体躯であり、タエロスに勝るとも劣らない。彼の肌は浅黒く、その質感は古い皮めいており、目は好奇心に輝いていた。彼は手を挙げ、挨拶をしてきた。パルマタスは彼の前腕部に色褪せたインペリアルイーグルの刺青の輪郭があることに気付いた。 「いらっしゃいませ。私はハルモン・デルフィと申します。トゥルク家門へようこそ。」 この不敬に対する不快感を隠しつつ、パルマタスはオジギを返した。彼の腕にある刺青は、帝国軍人であった証であり、帝国の視点でみると、彼は離反者であり裏切り者である。彼はタエロスも同じ事に気が付いたと分かっていたが、ありがたいことに中隊長は沈黙を守っていた。 「こちらこそ宜しくお願い申し上げます。歓迎痛み入りますな。」 「我々がここを訪れたのは、アウン=ウォ・トゥルク・キ=ナ殿(トゥルク家門のキ=ナ導師)と交渉を行うためです。私は彼と、かのニムボザコロニーの問題を平和的に解決できると確信しております。」 |
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「実はですね…」デルフィが切り出した。開かれた掌は、謝罪のジェスチャーである。 「まことに遺憾ながら、私は、キ=ナ導師からあなた様方に誠心誠意の謝罪をお伝えするようにと仰せつかっております。導師は現在大変多忙でして、あなた様方をお迎え出来ない状況です。導師は、何卒ご容赦頂き、暫くの間都市の方でおもてなしさせて頂く事を望まれております。」 パルマタスは礼儀正しく頷いた。彼が最初に抱いていた楽観論が確信めいてくる。キ=ナ導師は、この取るに足らないゲームで失着の一手を打ってしまったのである。帝国海軍の報復艦隊がニムボザに到着するまで、毎日のように和平交渉を行い、時間を浪費させれば良いのである。 彼は恭しく話し始めた。 「キ=ナ導師におかれましては、格別の御配慮を頂き、痛み入ります。どうか、我々の感謝の意をお伝え下さい。そして、もし宜しければ、我々を宿舎まで案内して頂けますかな?」 デルフィは笑顔を浮かべつつ彼の入ってきた扉を開き、無機質な回廊へと案内した。瞬間、パルマタスは全ての方向感覚を失ったが、やがて、彼等は塔の中心部へと下っている事を知った。 |
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宿舎はシンプルで機能的な作りだった。そこは、日常生活を行うには十分であるが、あらゆるものが必要最小限でもあった。 デルフィは、1人のタウ人を紹介した。 彼は一行の宿舎に詰め、滞在中の案内を行う。パルマタスは、その「案内役」は、キ=ナ導師が自分達に見せても良いと考えている範囲の事のみを見せる「監視役」でもあると認識していた。 翌日、パルマタスは早朝に起床し、タエロス、タウの案内役と共に都市の視察に赴いた。タエロスは、くれぐれも友好的に、とパルマタスが諌めたにも関わらず、檻の中のカタチアン・デビルめいてイラつきを隠し切れないようである。彼は、かのスペースマリーン中隊長が不作法な振る舞いをやめてくれる事を望んでいたが、同時に不快感を口に出してブチまけられるよりは幾分マシであるとも考えていた。自分達が常に監視下にあると想定すれば、仲違いや口論する様子などは決して見せてはならない。 太陽が上り、強烈な輝きを放ち始めたが、パルマタスは皮膚防護の為に特殊な軟膏を既に塗布していた。 昨日見た銀色の反重力列車がホームに入ってきた。彼等は空中の力場レールに沿って移動を始め、地上から何千フィートも離れた。パルマタスが昨日目にした建物群は、様々な滑らかな材質で造られていることが分かった。継ぎ目の全く無い白い石のパネル、輝きを放つ金属円柱、精巧な彫りが入ったガラス板、反対側まで透き通っているブロックなどである。それぞれ、控えめにあるいは象徴的に、帝国の異種族学者が解読しようと躍起になっているTAUのシンボルが彫られていた。 ビル群は、美しく単調化された工業的なデザインで、目立って景観を乱すような建物は一つとして存在しなかった。 反重力列車は次第に下り始め、弧を描きながら都市の下層部を通り抜けた。この場所の建造物は、都市の中央部と比べてさらに平坦かつ単純なデザインであり、小さいものが多かった。 |
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「我々は何処へ向かっておるのですかな?」パルマタスはタウの案内役に訪ねた。 そのタウ人は振り向いて、無機質なヘルメットをパルマタスに向けながら、前方の巨大な建造物を指差した。 「バトルドームです。火のカーストの兵士たちの訓練風景をご覧頂きます。とりわけ、キャプテン・タエロスには興味深いのではないでしょうか?」 スペースマリーンは、頷きながらぶつぶつと喋り始めた。 「素晴らしいことだな。我等の敵がどのような戦い方をするのかを知る事ができる。」 「キャプテン、我々はあなた方の敵ではありませんよ。そして、我等ファイアウォリアーを見れば、きっと敵にはなって欲しくないと思われることでしょう。」 「我は戦士である!」タエロスが声を荒げた。 「我は我らが皇帝陛下の御意志のままに戦うのであり、皇帝陛下が敵と見なされたのであれば、誰であろうと敵だ。そこに我が意思が介在する余地は皆無である。」 「中隊長の仰りたい事はよく分かりますぞ。」 パルマタスは慌ててとりなした。 「彼の御方は、自ら敵を望まれることは殆どありません。最も、皇帝陛下の宿命にほんの少しでも影響がある場合は別でしょうが・・・ともかく、我々は敵同士となりたくはない、というのが帝国の嘘偽りない希望なのです。」 異星人は納得したように見え、反重力列車をバトルドームに入れるために再び前を向き直った。 |
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ドームの内装の途方もないスケールにパルマタスは溜息を漏らした。 天井は全てを覆い尽くすほど巨大であり、謎めいた原理で空中に浮いたまま固定されていた。彼には、この巨大な建造物が自立出来る筈がないと、考えることで精一杯であった。 ドーム内は大きさの異なる幾つかのエリアに分けられており、それぞれは想定されうるあらゆる戦場が再現されていた。森林地帯、市街地、砂漠地帯、水で満たされたエリア、その他にも様々な戦場がドーム内に広がっていた。 反重力列車は、ある巨大なエリアに近づいて行った。そこは、組み立て式の建造物、地雷原、そして幾つかの装甲ビークル。パルマタスが見紛う筈がない、これはまさに、小スケールのニムボザコロニーを再現した戦場であり、帝国様式めいた戦車群が目標として設置されている。 目標群の中を、幾つかの巨大な人影が通過していく。重バトルスーツを着装したファイアウォリアーである。それぞれの兵士は、恐るべき指向性兵器を構え、同様の兵器が肩にも装備されていた。 バトルスーツの前方に、軽装のファイアウォリアーが2スカッド展開し、戦場を駆け抜けつつ遮蔽物の影から互いをサポートするための射撃を繰り出している。 やおら、戦車をロックしていた重バトルスーツの火器が火を吹いた。戦車は凄まじい爆発を起こし、ターレットは空中高くに吹き飛んでいった。目標群は速やかに制圧され、反重力列車は再びその場を離れた。 その後2時間に渡り、パルマタスとタエロスは様々な戦場を想定したファイアウォリアーの訓練風景、高度に発達した重火器群、ビークル、ウォーギアなどを視察した。彼等が再び日の光の元に出てきた頃、パルマタスは、タエロスがタウの軍事力に対して新たな尊敬の念を抱いていると感じた。 |
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反重力列車が、再び都市中心部の高みまで登り終えると、タウの案内役はヘルメットを脱ぎ傍に置いた。彼の顔は平坦な、典型的なタウのそれであったが、前頭部にはダイヤモンド型をした骨の盛り上がりがあった。黒髪が彼の頭頂部から流れ、精巧な細工の髪留めが幾つもついている。彼の深い目は、一対の黒い溝めいていた。 その異種族は、パルマタスを凝視しながら話し始めた。 「ラファエルよ、そなたは我が兵達の戦い方を既に見たはずだな。その上で問うが、ニムボザの我が軍に対するそなた等の抵抗は、愚か極まり無いと思わぬだろうか?我は人類に尊敬の念を抱く。彼等は勇敢で、栄光のみを追求する。しかし、我々に立ち向かうのは無謀だ。そなたは、自軍の増援がニムボザに到着するまで、我が軍の攻撃開始を遅らせるための遅延交渉に来たのであろう?だが、それは無意味だ。コー(TAU宇宙軍)が我にもたらした情報によれば、そなたらの艦隊はニムボザから未だ数ヶ月の距離にあり、到着の遥か前にニムボザは我が手中となろう。」 タエロス中隊長が何かを言いかけたが、パルマタスは速やかに割り込んだ。 「恐れながら、キ=ナ導師とお見受け致しますが?」 「如何にも。」エセリアルは頷いた。 「なれば、我等の増援艦隊がニムボザに到着した暁には、我等はあなた方と闘う事になると認識して頂きたい。皇帝陛下は決して領地をお見捨てになることは無く、我等臣下は陛下の名を讃えましょうぞ。」 「ラファエル・パルマタスよ、そなたは聡明な人物だ。そして、ここに居るそなたの寡黙な軍事アドバイザーも、非凡な戦士である。そなた等は、皇帝の元へ帰りここで見聞きした全てを伝えるがよい。このままでは、皇帝の名の下に全ての兵が死するであろう事を告げ、そうまでして我々の主義に抵抗する価値があるのかどうかを問うが良い。」 |
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「我等は貴様達と闘うだろう、異種族よ。」 タエロスは唸るように即答した。 「最後の一滴の血が流し尽くされるまで、我等は貴様達と闘い続けるだろう。」 「…心得た。」 導師は悲しげに返答しつつ彼方に目をやった。 |
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以上です。終わり方がカッコイイですよね。 胡散臭い外交官の態度など、色々見所は多いですが、何といっても注目なのはタエロス中隊長ですよね(笑)。 タウの話のはずなのに、もはや主役。 全体的に辛抱たまらん感じとか(笑)、エセリアルの要求に対して毅然と反論するところとか、如何にもインペリアルフィスト!って感じでカッコイイです。 マリーンのコデックスに、キャプテンやチャプターマスターは、帝国の交渉事の時はフル装備に身を包んで無言で立ち、相手を威嚇するのが主目的である的な設定が書かれてますが、それを地で行ってるのも良いですね。 恐らく、パルマタスは「ちょいとゴネてみて、エセリアルの出方を伺いつつ、話を持って帰るって事でさらに交渉を継続しよう」と考えていたような気がするのですが、このお方のせいで全て台無しって感じですよね(笑)。 ちなみにこの後の史実は、コマンダーファーサイトの一番弟子である、コマンダーブライトソードってヤツの指揮で、二ムボザの住民は皆殺しにされます。 その4ヶ月後、いよいよインペリウムの増援部隊が進攻してきますが、ブライトソードは増援部隊を峡谷まで誘導して、徹底的に包囲攻撃を行い、これも全滅させます。 この出来事はインペリウム側で「コーロス峡谷の殺戮」として記録されている、ということです。 これで勢いをつけたタウ軍は、コマンダーシャドウサンを最高司令官に据えて、新たな領土拡張政策に乗り出すという流れから現在に至るって感じですかね。 まぁ、タエロス中隊長が生き残ったのかどうかは知りませんが、熱い漢ですしイラストも公開されているので、是非Rman君にキャプテン・タエロスを作って頂いて、対戦したいものですね(笑)。 |