シタデルミニチュア ペイント大全のススメ by Rman(H24.5.6)
2012年4月、シタデルカラーレンジの一新。 これはウォーハンマーファンのみならず世界中のミニチュアペインター、ゲーマーにとっても大きな出来事で「事件」といってもいいくらいの衝撃でしたね。 シタデルカラーしか選択肢が無かった一昔前に比べたら、ミニチュアペイント専用カラーも各社から発売されてこそいますが、 それでもやはりシタデルカラーは数多くのミニチュアゲーマーに依然として支持され続けているように思います。 ミニチュアゲーマーに愛用され続けてきたシタデルカラーが旧来のカラーを全て廃止し、カラーレンジを一新する、 このニュースに期待と不安の混ざった複雑な気持ちを持った方も多いのではないでしょうか。 結果としては、新しいシタデルカラーは旧来のカラーとも互換性が十分にあり、なおかつ全部で145色というカラーの豊富さ、 今までありそうで無かった痒いところに手が届くような色も大幅に増強されており、ネガな点は全くありませんでした。 そして、もっとも大きなポイントは「シタデルペイントシステム」というシステムを確立したことではないでしょうか。 そのシステムのために145色のカラーは6つのカテゴリーにわけられています。(以下@〜Eの解説はけっこうテキトウです) @ベース・・・ミニチュアのベースカラーとしてペイントする色。隠ぺい力が強い。 Aドライ・・・ドライブラシ専用のカラーで水分が少なめ。 Bシェイド・・・シェイド専用のカラーでシャバシャバの透明液。 Cレイヤー・・・重ね塗り専用のカラーで従来のシタデルカラーがこのレイヤーと同等の性能。 Dグレイズ・・・シェイドに近い透明の液体で色調の調整に用いる。 Eテクニカル・・・ベースデコレート用の砂入り塗料など。 この6つのカテゴリにわけられた新シタデルカラー145色。 この145色を用いるシタデルペイントシステムの凄いところは全く混色しなくてもペイントできることです。 ベースカラーを塗って、ドライブラシして、シェイドして、レイヤーでハイライト、あくまで混色は無しでOK。 かなり繊細な重ね塗りにも対応できるほどの色数があって、混色が苦手な人にはまさに朗報といったとこでしょう。 とはいっても、このカテゴリー通りにカラーを使用しなければならないと言うことはもちろん無く、 それぞれの色を混色することも可能ですし、旧来のカラーとも全く問題なく混ぜられるので、 旧来からのシタデルカラーファンにとっては単純に色数大幅増の嬉しいリニューアルともいえるでしょう!。 余談が長くなってしまいましたが、ここで紹介したいのは新シタデルカラーと同時に発売された「シタデルミニチュア・ペイント大全」です。 タイトルのとおり、ペイントの解説本です。 |
これがすごく良かったので、改めて紹介したいと思います。 この本は新シタデルカラーと同時発売だけに新カラーに完全対応した内容になっていますが、 新シタデルカラーを揃えていない旧来からのミニチュアゲーマーにとっても一読の価値ある1冊です。 定価が6800円とかなりの金額なのですが、このホビーを永く続けていく上で非常に有意義な知識を得られること請け合いです。 |
裏表紙に書かれたキャッチコピーがまた熱いですね。 「ミニチュアバトルゲームのためのアーミーペイントガイド」 いままでもペイント解説書はありましたが、アーミーのペイントにまとを絞った1冊はありませんでした。 内容もキャッチコピーの通りで、美術品的ペイントの方法ではなく、どうすればカッコよく誇るべきフルペイントのアーミーを作れるか、 そこを至上命題として書かれています。 ペイント教本というと単品塗りのペインターさんのためのものという印象も強いですが、 この1冊だけだミニチュアゲーマーにとってこれ以上無いペイント参考書として機能することでしょう。 |
ちなみにページ数は136ページもあります。もちろんフルカラー完全日本語版。 毎ページに使われている紙も厚手でかなり上質なものなので、これは実際にペイント中に「使う」ことを想定して丈夫な作りにしてあるのでしょう。 |
この本の良い所は全くのペイント初心者に対しても分かりやすく手厚い解説がなされているところでしょうか。 ウォーハンマーを知り、初めてミニチュアのペイントをすることになったという方もきっと多くいらっしゃると思うのですが、 そういった方にも基本的な流れからツールの選択などなど、全てが丁寧に解説してあります。 また、筆の手入れ方法など、上級者でも失敗しがちなポイントについても丁寧に解説してあって、僕なんかも改めて勉強になりました。 あと、「リフレッシュしようぜ!」というコラムなんかもあって、 ペイント中に紅茶を飲むことの大切が解説してあったりでさすが英国生まれの趣味らしいなぁ〜とちょっとウケました。 でも、休憩は大事ですよね、実際。 |
もちろん、ペイント大全といっても、ペイントに至るまでの道のりについてもばっちり解説してあります。 プラ製品の組立からファインキャスト・レジンの組立の解説も写真付きで非常に分かりやすいです。 ちなみに本は上の写真のように立てられるようになっていて、ペイント机におけば塗り方などを見ながらペイントが出来るようになっています。 これがこの本が実際にペイントで「使える」ひとつの大きなポイントでしょうか。 |
ペイントに欠かせない下地作りのためのアンダーコートについても3ページにわたってしっかり解説してあります。 ちなみに、僕は自分で言うのも何ですがかなりのミニチュアを塗ってきました。 もちろん、アンダーコートスプレーも常に使ってきましたが、 そんな僕でも「えぇ!?そうなんだ!?知らなかった・・・・・」と驚くべき事実が記されていました。 「スプレー缶を傾けると噴射されるガスや塗料の割合が変わってしまい最高のパフォーマンスを発揮できない、だから常に缶は立ててスプレーすること」 これ、知りませんでしたね(笑)。めちゃめちゃ上から目線で吹き付けてましたね、今度から気を付けないと・・・。 そんな感じで自称ベテランにとっても意外な情報があったりするので、侮れません。 |
様々なテーマをもとに見栄えのするペイント法が解説してあります。 肌のペイントも参考書が無い時代は試行錯誤したものですが・・・・ |
こんなに丁寧に解説してあって、右下の完成写真ともなると素晴らしい出来栄えですよね。 これが全く混色無しで再現できるということもあって、新しいシタデルカラーの底力を実感させられます。 もちろん、新カラーがなくとも、肌のペイントはこうやるとカッコよく仕上がるという実例が見られるという点において 旧カラーを使用している人にとっても参考になることでしょう。 |
マリーンのアーマーのペイントについても書かれています。 のっぺりとしたスペースマリーンのアーマーをどうやって塗ったらいいかわからないと悩んでいる方も多いと思います。 僕も昔それが分からなくてとんでもない方向に行ってしまいましたが(スラーネッシュマリーンのスジ出しグラデーション)、 これをみたら、どうやってハイライトを入れていくのか一目瞭然ですよね。 |
僕がこの本で最も気に入っているのが後半のセクション。 「アーミープロジェクト」と題された後半は8つのアーミーにスポットを当て、各アーミーをいかにペイントしていくかが詳細にかつ分かりやすく解説されています。8つのアーミーはティラニッド、オーク&ゴブリン、ハラド、エンパイア、スペースマリーン、トゥームキング、ゴンドール、ダークエルダーです。 具体的かつ意外なほど簡単なペイント法により、フルペイントのアーミーが出来上がっていく流れはまさに目から鱗といったところで、 「フルペイントのかっこいいアーミーを誰でも作れる!」というシタデルペイントシステムの真骨頂がここに収録されています。 ちなみに、僕が何度も挫折したティラニッドについても、すごい簡単な工程でこんなにカッコイイの?という仕上がり。 |
あの簡単なペイント法でこんな超イカすアーミーが作れるってマジですか!?みたいな。 この記事をみて、僕もティラニッドを作れるような気になってきて、大変気分が良いです。こんど、作ります。 (笑) |
僕もかつてはエンパイアに熱狂した男なので、エンパイア解説も気になるところです。 今もマリーンが落ち着いたらエンパイアの増強も再開したいなぁ〜と思ってはいるんですけどね。 |
ベーシックな一般兵のペイント法もしっかり解説してあります。 顔のペイントなんかもアーミー問わず参考になりますよね。 |
じゃーん!こんなカッコイイアーミー、誰でも作れるってウソじゃろ〜と思いそうですが、この本を読めば 「他のヤツは無理でも俺なら出来る!」という気分にきっとなります(笑)。 |
ちなみにスペースマリーンもばっちり解説してあります。 アーミーを作ろうと思い至る経緯から解説してあって、非常に親近感がわく構成になっています。 |
途中ははぶきますが、このオーロラ戦団の格好良さ。同じマリーン使いとしてはちょっとジェラシーを覚えてしまうほどの完成度の高さ。 このクオリティーのアーミーが自分のものになったら、それはもうほんと誇らしいことですよね。 |
トゥームキングもこの出来栄え。ヤバイですね。ちなみに各アーミーにつき10ページずつ設けられています。 そのアーミーを簡単に格好よくペイントするコツが沢山の写真とともに詳細に解説してあります。 |
ダークエルダーは僕もいつか必ず作りたいアーミーでミニチュアだけはアホみたいに沢山買ってあるのですが、 この記事をみたらもう自分が作ったかのような満足感が味わえて、ダークエルダーは後回しでいっか〜となってしまうほどです(なんじゃそりゃ)。 繊細なエッジングが要求されるダークエルダーのペイント法ですが、この本を読むことで誰にでもコツがしっかり理解できると思います。 昔はよく「習うより慣れろ」みたいな台詞が飛びかっていたミニチュアペイントでしたが、 この本を見たら100人中100人が「慣れる前に習ったほうが上達が早いですよ」と言ってくれることでしょう(笑)。 |
ちなみにハイライトからシェイドまでの色の配列もこういう風にあって、新シタデルカラー145色を迷わずに使いこなすためのサポートも万全です。 ま、145色まとめて買っちゃった人もそうそう居ないでしょうから、 このページを見ながら自分の塗りたい色やハイライトの色を買い足すというのもありでしょうね。 それにしても、混色無しのペイントできっちりと格好良く完成させることができて、見栄えのするアーミーが作れるというのは本当に凄いことです。 |
そうそう、忘れてはならないのがDVDが付属しているという点です。 この本の中に収められたペイントテクニックが映像としても再確認できるのです。しかも嬉しいことに解説は日本語吹き替え付き! ちなみに吹き替えの声はオールドファンにとっては憧れのGWスタッフ奥田恭子さんが担当されているそうです。 非常に淡々とした抑揚の無い語り口は聞きなれてくると、とても耳に心地よく、眠りの世界に誘われた方も多くいらっしゃるでしょう。え? いままでありそうで無かったGW公式のペイント解説ビデオ。本の内容の復習にも最適ですし、実際に筆運びなどを映像でみることで、 よりペイントのやり方がダイレクトに伝わってきますし、初心の方ほどペイントに対する敷居が下がってくるのではないでしょうか。 |
最後に フルペイントのアーミーは夢のまた夢と考えているミニチュアゲーマーも多くいらっしゃることでしょう。 しかし、本書を一読してみることで、フルペイントのアーミーって実は案外身近で手に届くところに存在していることにきっと気付くことができるでしょう。 しかも、そのフルペイントアーミーは誰が見ても感嘆の声をもらさずにはいられない最高にイカしたアーミーなのです! そんなアーミーを作るための知識が詰まった1冊、6800円は確かに良いお値段なんですが、 アーミーの戦力増強をすこし我慢して買うだけの価値はあります! アーミーのためのミニチュアペイントを続けてきた僕もイチオシせざるをえない優れたペイント教本です。 日本の義務教育過程にもぜひ取り入れて欲しいくらいですね(うそ)。 |