ベタとウォッシュを主体にしてミニチュア量産してみよう

by 卵帝


こんにちは。RoR副管理人の卵帝です。
早速ですが、皆様は、アーミーぺインターというメーカーはご存知でしょうか?
ミニチュアゲーム用の良質な塗料などを安価で販売している会社で、海外でも利用者が増えてきているといいます。

趣味人の皆様は、それぞれコダワリがあり、俺は大本命のシタデルだ!
とか、いやいや色数でいえばファレフォでしょとか、P3の発色が凄いとか、
全部の良いところを併用すれば良いじゃんとか、色々と話は出てきます。
今回注目するのは、それらのカラーとアーミーぺインターを比べてどうこうという話ではなく、
アーミーぺインター社が提唱しているペイントシステムについてです。

我が社のシステムを使えば、楽々アーミーを量産だ!みたいな感じで、大まかに言うと

@カラーサーフェイサーで一気にベースカラーを乗せる。
Aベタで塗り分ける。
Bクイックウォッシュ(筆塗りや、大きな缶にミニチュアごとドボン!)
C(やりたいなら)その後ハイライト等々の仕上げ。

というモノです。Bまでで終わらせることも大いに奨励されてます。
どうですか?何とも夢のような、というか、こんな簡単そうな流れで良質のアーミーを量産出来るならそれは素晴らしい事だと思います。

しかし、同時にホンマかよ?とも思います。そんな上手い話があるのかと。

そこで今回は、アーミーぺインター方式に則って、ユニットを制作してみようと思います。
僕は、昔からビークルを塗ったりする時に似たような感じの事をやった事があるので、何となく雰囲気は掴めています。
ケイオスマリーンのプレーグゾンビを40匹同時に量産した時も、この方式でやってみました。

そういうのを踏まえて、大分自信がついてきましたので、逐一撮影をしつつお届けしていきます。
ついでに、僕がペイントする時に注意してるような事も一緒にご紹介できればと思います。

僕は普段割と凝ったペイントをしてる方だと自分では思ってるんですが、今回はアーミーぺインターの流れに従って極めて簡略化した工程で行っていきます。

全くこの趣味に手を出されたことがない方は、へぇーこんな風にミニチュアって塗られてんだー、みたいな感じで。
ペイントを始めたばかりの初心者の方には楽しいアーミー制作の一助として。ベテランの方々には、ペイントの基本事項を再確認しつつ、
何か新しい発見があるかも、とそういう感じで完成まで気楽にお付き合い頂ければと思います。

工程は番号で書いていきます。たまに「.5」が入るかと思いますが、それはやれば作品のクオリティ上がるけど、面倒なら別にやらんでも良いでしょうというプロセスです。
肝心のお題は、PP社の名作スカーミッシュゲーム、Hordesから、僕がメインアーミーにしているスコーネのナイアレイターというユニットです。
ナイアレイターは、言わば狂戦士部隊で、敵味方構わず切りまくる恐ろしい連中です。

それでは、始めていきましょう!
1:ペイントスタートです。
白サフ吹いて、フィルアップまで終了しました。
フィルアップというのは、ミニチュアの奥まった部分や足元など、サフの吹き残しがあるような部分を、筆で塗り潰していくことです。
使ったのは、シタデルのベースカラー「セラマイトホワイト」。綺麗な白が出る良いカラーです。

あ、今回は、アーミーぺインターには申し訳ないのですが、アーミーペインター製のカラーは使ってません(笑)。
あくまで、手元の有り合わせカラーで、アーミーぺインター方式に近づけてやってみるというのが趣旨ですので。

フィルアップを行う場合、カラーを水で薄めても良いのですが、僕は田宮のアクリルシンナーを使っています。
模型屋ならどこでも売ってると思いますが、この溶剤は水より表面張力が低いので、
奥まった部分にもスルスルと流れていってくれて塗り残しが出ません。あと、その後の塗料の食いつきも水より良好です。

水で全く問題ないと思いますが、一応ご紹介しておきますので、気が向いたら使ってみて頂いても良いかもしれません。

さて、目立ちにくいですけれども、実はナイアレイターには、肌の部分にアクリルシンナーで薄めに溶いたカーキ色を塗ってあります。
何故普通に塗らないかと言いますと、後でウォッシュかけた時に濃くなりすぎるからです。

この辺アーミーぺインターなら、元々骨色のサフを吹いとけって感じなんでしょうね。
こっちは有り合わせですので、シタデルにそんな色のサフは無いのです(笑)。
2:腰布と、腰ひもの部分をシタデルベースカラーの「メフィストンレッド」でベタ塗り。
ここははみ出しまくっても構いません。むしろ、丁寧にやるだけ時間の無駄でしょう。太めの筆でびゃーっと行きました。
一応、太ももやらお腹やら、赤と肌の境界部ははみ出さないように注意して塗ると後が楽だと思います。
3:サンダルやら、足の革紐?やらを旧シタデルファンデーションの「イアンデンダークサン」でベタ塗り。
旧カラーがしばしば入りますが、まぁ、似たような色と考えてください。

ナイアレイターをまんま塗られる方もおられないでしょうし(笑)。
はみ出してた赤ごと塗りつぶします。
4:残りの腰ブロックを黒で塗り潰します。
金属色は暗い色の上からペイント、というのが常識なんですが、
コレは金属の下地等という高尚なものではなく、単に黒くしたいからです。
マジ塗りならともかく、量産の場合は下地作りなど過ぎた工程ですね。
塗り潰した中には金属アーマーも入ってますが、
結果的に一緒に塗っちまっても構わないからそうしただけで、下地作りが主目的ではないという事で。
4.5:黒い腰布の部分にシャシャッと旧シタデルカラーの「コデックスグレー」でドライブラシ。
ウォッシュを行っても、シェイドしか入らないので、黒にはハイライト的なものを入れといた方がカッコイイと思います。
10体やっても数分の作業ですし。金属部へのはみ出しは気にせずに。

5:そう言えば、いつの間にやら砂がまかれています。
ベースデコレートが面倒って話はよく出ますが、僕は今日の作業は終わり!ってタイミングでついでにまいときます。
こうすると、ボンド乾燥時間が無駄になりませんし、ミニチュアペイントの流れでベースに入れますし。
ミニチュア完成からベースまで一拍置くとやる気が萎えがちになりますかね。
6:いよいよ最強の難関、金色です。発色しにくい色なんですが、ここはもうしょうがないですね。
セレクトしたミニチュアが悪い(笑)。細い筆使って、旧シタデルの「ドワーフブロンズ」をなるべくはみ出さないように塗っていきます。
まぁはみ出しても良いんですけど。

僕は旧シタデルの「ドワーフブロンズ」→「バーニッシュドゴールド」って二重に塗ってるんですが、
これに限らず金を綺麗に発色させる秘策は趣味人ごとに違うイメージがあります。
廣島ミニチュアゲームの会内部でも統一されてないんじゃないでしょうか。

僕はドワーフブロンズを普段使わないので、ここで下塗りに使っているという消極的な理由からです(笑)。
調べてみればシタデル新色とか、他社製品、果ては ガンダムマーカー等々色々出てきます。

僕は普段は金から銀へ何段階かグラデかけてるんで、一発の発色というのはそこまで気にしてないのですが、
こういうベタの量産塗りでは重要なファクターになってきますね。
7:ブロンズの上から続けてゴールドを塗って、バッチリ発色できました。
二回塗れば、下地が白でも黒でも赤でもキッチリ発色してくれます。
しかし、流石は最大の難関。ブロンズ&ゴールドで合計5時間ぐらいかかりました。普通にキツい!話が違うぞアーミーぺインター!
って感じですが、モデルセレクトと10体進行のせいですね(笑)。 。
8:シルバーを塗りました。旧シタデルの「チェインメイル」です。
暗くも明るくもない普通の銀ですね。
ナイアレイターは体に刃物を埋め込んでかなりのマゾさを表現していると同時に、ペイントもマゾくしてくれているという半端ねぇ連中です。
シタデル銀は隠ぺい力超高いから良いですね。
8.5:8で塗り分け自体は終了してますが、ウォッシュの前にはみ出しを修正していきます。
赤を塗る際に、太ももを塗り過ぎてるのがお判りでしょうか。金もチョイはみ出してますね。
こうやって、10匹をチェックして修正していきます。綺麗な作品を求めるならば、全ペイント工程でこういう直しが一番重要ですね。
9:これで「ベタの塗り分けが終了」という状態です。いまいちタイミングが無かった(笑)剣の持ち手も塗りました。
この「綺麗に発色してるけど、何かもっさりしとるのぅ…」と感じられる状態が、
実は、ドバっとウォッシュを行うのに最高なコンディションだと言えるでしょう。

9.5:細かい注意点ですが、修正をした場合は、ウォッシュの前に小一時間程度置かれる事をオススメします。
特に金属色の修正した場合、直ぐにウォッシュすると溶剤に金属粒子が浮いてきてアレな状態になりがちですので。
なんか組立でもやるか、アニメを2話程観ましょう(笑)。
10:ウォッシュしました。この工程は一気に完成が近づいた!って感じで、テンション上がってきます(笑)。
下ごしらえが長いところは中華料理みたいですね。
アーミーぺインターのウォッシュ缶にドボンしてみたいのですが持ってないんで(笑)、
旧シタデルインクをペンチングソルベントで薄めて使用しました。
今回は、スコーネ人の肌の色も勘案して、黒:茶:紫が4:4:2ぐらいの配合です。太い筆でバシャバシャ。
ペンチングソルベントとは何ぞや?という事で、一応ご紹介します。
コレは画材店とかで売ってるアクリルシンナーの一種でして、これを混ぜてカラーを薄めると乾くのがメチャ遅くなります。
遅くなるが故に、作業時間が増え、カラーのグラデとかがかけやすくなります。あと、カラーの延びも水より良いんじゃないでしょうか。
僕は2000年にペイントを始めた当初、Rman君から教えてもらいました。

このペンチングソルベントは、この記事を執筆してる時点で二本目という事で、消費の少なさが伺えます(笑)。
最初はなんか使ってましたが、とにかく乾燥が遅くなるんで、量産に支障が出るんですよねー。

現在、僕のペイント工程でこのお方が登場するのは、まさにこういうウォッシュの時です。
経験ある方もいらっしゃると思いますが、水でウォッシュすると直ぐに水玉を作り、何とも汚い感じでカラーが乾きます。
その点ペンチングソルベントは、山だろうが谷だろうが、ミニチュア表面に均一に広がってムラなくウォッシュしてくれるのです。

何せ、当時はシタデルシェイドやシタデルウォッシュなんて専用カラーは無かったものですから(笑)。
古式ゆかしい方法で、僕も普段はウォッシュやシェイドを使いますが、
今回みたいに大量にウォッシュ液を作りたいときや、ビークルなんかの平面が多いヤツにウォッシュするときは、まだ出番があります。

平面へのウォッシュの均一性という点では、こちらの方が優れてますね。

まぁ、何れにしろ色々カラーのあるこのご時世、無理に使うモンじゃないと思います。
一応工程の中に出てきたんでご紹介したといいうだけです。

あと、十年以上前から言いたいんですけど、どう見ても「ペインティングソルベント」ですよね(笑)?
商品名なんでしょうがないですけど。
10.5:ウォッシュが終わったら、少し置いた後、こうやって溜まってきた部分をティッシュを細くしたのとかで吸うと良いですね。
乾燥速くなりますし、変な斑が出ないようになりますし。
この辺、先述のペンチングソルベントなら、乾くのに数時間以上かかるので、
余裕なんですが、シタデル製品なら少し駆け足でやったほうが良いかも。
11:ウォッシュも乾きましたので、いよいよ仕上げの細部です。
まずはスコーネアーマーを塗りました。旧シタデル赤インクを薄めて縁取りの中をメタリックレッドにペイント。
あと、ギザギザ?モールドにスミ入れっぽく黒を入れました。
インクはどこのでも良いですし、シタデルグレイズとかでも良いと思います。多分。
12:次は目とか歯です。人形は顔が命ですから良い筆で丁寧に。
当然、一発ではいかない場所も多数ありますので、はみ出したところは、黒で修正しました。
スコーネ人は、基本白眼なんで視線を合わせたりしなくて良いので楽ですね。
12.5:刃物が刺さってる部分を、シタデルシェイドの「カルロブルグクリムゾン」で腫れてる?っぽくしました。
見本がそんな感じでしたので、やった方が迫力が出そうです。これで、本体のペイントは終了しました!
13:本体完成の勢いで、一気呵成にベースを仕上げました。
前にも書きましたが、じゃあ次はボンドで砂を…とかになると完成が1日延びたり、あるいは数年延びたりしますから(笑)。
ベースデコレートってのは、ホントに重要でして、6割完成ぐらいの駒でもベースがやってると殆どバレませんし(笑)、
逆に完成しててもベースがそのままだと完成に見えません。

そういうのを見ると、何とも勿体ない気分になってきます。

僕は、何名かベースをデコレートしない主義の方とお話させて頂いた事がありますが、
その場合でもタグの差込口などはパテで均一にし、ペイント過程で付着した塗料は黒で塗り潰しといた方が良いかなと思います。

人間と一緒で、ミニチュアもオシャレは足元からです。

ちゅうことで、駆け足でしたが、ナイアレイター10匹無事に完成です!
最後に
お付き合い頂きまして、ありがとうございました。何か参考になる部分はありましたでしょうか?
こうして実際に行ってみた感想としては、下地、塗り分け、クイックウォッシュと、アーミーぺインターはさも簡単なように書いてますが、実際は塗り分けが大変ですね(笑)。
まぁ、難しげなネタを選んでる僕のせいもかなりありますが…

ベタにおいて、発色とはみ出しは馬鹿にできません。ベタの上から行われる華やかなグラデや宝石塗り、NMMなんかも、足元がおぼつか無ければ美しさを発揮できません。
そして、作品の完成度が素晴らしければ、素晴らしいほど、たった一か所のはみ出しが超絶目立ちます。
綺麗な完成品を目指すならば、8.5の工程でいかに妥協しないかでしょう。
綺麗に塗り分けるスキルを身に付ける事は、グラデや描き込みの腕を磨くより、何倍も大事な事だと思います。

根性論めいてきましたが(笑)、コレはマジ塗りの道を突き進む方への言葉でして、僕自身も常に戒めております。
まぁですが、普通に遊ばれるときはパッパと塗って、バンバン戦場へ送り出したいものですね。

それでは、この記事が皆様の快適なアーミー制作のお手伝いになる事を祈りつつ、また別の記事とかでお会いしましょう。

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