チャンピオン・オブ・コーン(エグザルテッド・デスブリンガー) -Champion of Khorne- by 籾山庸爾

籾山庸爾さんのコメント
先日、Rman君と語らって楽しんだ「ペイント・イッポン」の題材作です。
単体ミニチュアの塗り込みということで、長年ルーチンワーク化していた「赤」のペイントに新しいアプローチで臨んでみました。
今回は〈血と暴虐の神〉コーンの伝統色である所の「赤・黒・真鍮」に正面からぶつかっています。
80年代からシタデルのケイオスを引っ張ってきたジェス・グッドウィンによる傑作ミニチュアは、
そのデザインはもとより、鎧、マント、筋肉、革、毛飾りと、どこをとっても申し分ない質感とバランス。
円熟したミニチュアデザインを活かして、各部をじっくりとペイントしました。 今回の新しい試みは「赤」です。
以前はベースコートに暗い赤をペイントし、シェイドをかけ、そこからハイライトをかけていました。

今回は黒下地からムラなくKhorne Red をベースコート後、Wazdakka Red - Evil Sunz Scarlet - Wild Riders Red - Krieg Khakiの順でひたすらブレンディングし、
最後にシェイドをグレイジング的に何度も差しています。

シェイドにはKantor BlueとCaliban Greenを使用し、Lahmian Medium様で20倍ほどに薄めたものを段階的に重ねて深みを出してあります。
また、最後にDrakenhof NightshadeとBiel-tan GreenをぞれぞれLahmian Medium様で20倍ほど薄めて鎧の各部に被せ、色味が冷たくなるように仕上げてあります。
今回、色の剥離表現はせず、もともと入っている傷のディティールを塗り分けた以外、ウェザリングは最小限に抑えてみました。
ただ、マントの裾だけはかなり傷んでいる造形なので、Agrax EarthshadeとSeraphim Sepiaを重ねて控えめに汚してあります。
また、シールドや兜飾りが特に顕著ですが、普段よりも絵画的な表現をしようと思い、影をかなりキツめに入れました。
こうした深く暗い影を入れるときは、安易に黒を使うのではなく、他の色を明るめに寄せることで、暗い色をまるで黒であるかのように見せることができます。
斧の刃には、Blood for the Blood Godをたっぷりと塗りつけました。

ここまで血がついていると、本来なら他の部分にも血が飛び散るものですが、やりすぎるとワケがわからなくなるので、ミニチュア上の演出として斧だけに血のりを被せてあります。
ベースデコレートは、主役であるミニチュアを引き立てる「舞台装置」に徹するため、高さをつけることなく、素直に仕上げました。
足元のドクロは、スケルトンのキットに付属してくる、後頭部が割られた頭部パーツを転がしたものです。
また、公園で拾った小石を岩に見立てて配し、シタデルのMordheim Turfで草も表現しました。
日本の趣味人との「ペイント・イッポン」は、Rman君が初手合わせとなりましたが、これからも折に触れて、「ペイント・イッポン」を重ねてゆきたいと思います。

ムッチーのコメント
一つのミニチュアをテーマに2者が競作する企画「ペイント・イッポン」。
RoR上での第一回の題材としてこのチャンピオン・オブ・コーン(エグザルテッド・デスブリンガー)は奇をてらわない正統派の甲冑の格好良さ、過不足ないコーン神の衣装と
ウォーハンマーらしい魅力に溢れたミニチュアで非常に相応しい題材ではないでしょうか。

magos Mechanicusさんが新たに試みた赤のレシピは非常に勉強になります。
黒下地の後に暗い色からじっくり立ち上げた丁寧なブレンディングと青、緑と反対色のシェイドを施したグラデーションは実に玄妙としか言えない味わい!
寒色から暖色まで滑らかに変化して、暗い部分は焼き付いたような味わいで、明るい部分は決してキツくないハイライトなのに造形のシャープさが際立ってて、
ベテランの全力の本気を見るような心持ちです。

マントも裏地は寒色のグレーから土汚れのごく淡い茶色がかった暖色のグレーまで変化していて色味の変化で目を飽きさせず、
表は黒のように見せた濃緑色でペイントに深みを感じさせますね。

Rmanさんのコーンチャンピオンに比べてmagos Mechanicusさんサブカラーに選ぶのは緑で統一されてるのも面白いですね。
赤の反対色としてのチョイスでしょうか。兜や楯の房のエメラルドグリーンもですし、撮影の背景も狙ってでしょうか。
こうした辺り、ペイントイッポンでの他者とのペイントの比較が際立って見どころだと思います。

斧の血のBlood for the Blood Godも皆さんはヒタヒタに塗りがちなのを薄くベッタリ塗られて殺しに殺した獲物のようなリアル感が出てますねぇ。
少し苦手意識があるカラーだったのですがこの表現は非常に魅力的でマネしたくなります。
ブーツを敢えてツヤにする点やベースを極力素直に仕上げてミニチュアを引き立てる点など、ペイント・イッポンに臨むべく隅々まで演出が行き届いた作品に感じました!

今回のペイント・イッポンの面白さ、妙味を味わい尽くさせてくれる良いミニチュア、良いマッチング、良いペイントでした。
これは自分もやってみたくなりますね!


2015.12.31